教職大学院の現況及び特徴
1.教職大学院のカリキュラムデザイン
新教職大学院の組織理念や人材育成の目的は、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーの整合性を図った上で、カリキュラムマップとして1枚のシートに関連づけて整理し、ウェブサイトやパンフレットにおいて外部に公開しています。また、本教職大学院のディプロマ・ポリシーを、神奈川県内の教員育成指標、及び本学スタンダードと関連づけた上でカリキュラムマップをまとめています。
教員養成・育成スタンダードに基づく学び
教職大学院が新しく生まれ変わるのに合わせて、「横浜国立大学教職大学院教員養成・育成スタンダード」を見直しました。地域が求める教員養成・育成の在り方を反映させるために、県内4教育委員会の育成指標の観点をすべて網羅するようなスタンダードを新たに作成しています。
新スタンダードは、左の図に示すような4カテゴリーから構成されており、教育現場で求められる資質・能力が、カテゴリーごとに観点として過不足なく盛り込まれています。また、各観点の到達目標は、学部新卒学生向けと、スクールリーダーを志す現職教員向けの2段階が想定されています。
学校実習を含めた学修・研究活動においては、この新スタンダードに常に立ち返りながら自らの学びを省察することで、目的意識を明確に持ち続け、より効果的に各自の課題に取り組むことを可能にします。
カリキュラム・ポリシー(教育課程編成方針)
学校マネジメントを担い学校や地域の教育活動においてリーダーとなる教員(スクールリーダー)を育成する「学校マネジメントプログラム」と、確かな学力の育成とそれを保障する授業改善や多様なニーズに適切に対応できる教員を養成する「教科教育・特別支援教育プログラム」の二つのプログラムを設定し、理論と実践の往還に基づいた学修を基本とし、次のような共通科目、選択科目、学校実習科目及び課題研究により教育課程を編成する。
- 共通科目においては、必置の共通5領域の中に、地域の教育課題についての理解を深め、実践力を培うことを目的とした科目である「神奈川の教育課題」の科目を設定し、神奈川のスクールリーダーとして求められる基盤的な学修を行う。
- プログラム共通選択科目とプログラム別選択科目に区分される選択科目において、共通科目の各授業を土台として学生一人一人の専門性や課題意識に応じて学修を深め、高度な研究能力を育む。
- 学校実習科目において、学校における教育活動や実務全般について総合的に体験し、授業や学級経営に関する基本的なスキル等を身に付ける。
- 課題研究を必修とし、学生自らが学校現場から課題を見いだし、その改善や解決に取り組むとともに教育実践研究を進める能力を身に付ける。
2.教育実践研究報告書 -学校実習と研究活動の往還・融合-
教育実践研究報告書は、実践報告書と修士論文相当に評価できるものに区別されますが、両者とも以下の実践報告書の審査基準を満たすものとしています。
- 課題、目的、方法、結果が一貫している。
- 開発した実践が教師の学びに関する理論と関連づけられている。
- 分析結果に基づいて実践の考察や解釈を行っている。
- 実践家として、実践(課題解決)を通した自身の学びが言語化できている。
- 取り組んだ実践は他の学校への波及効果が期待できる。
更に、教職大学院の実習を前提とする研究活動の特徴は以下の図「研究論文の種類」で説明できます。
つまり、「教育系学術研究(右側)」と「教育実践研究(左側)」の「独自性の共通性」を追求する実習・研究スタイルが教職大学院における学修活動になります。
学校課題解決研究Ⅰ・Ⅱ
学校実習と研究活動の往還・融合を図り、全学生が必修科目として履修する科目です。これは「教育実践研究報告書」に取り組み、学校課題の解決に資する研究(A4で10頁程度)となるように課しています。
以上をふまえて、学校課題解決研究Ⅰ・Ⅱにおける「学校実習と研究活動の往還・融合」の指導、即ち、アクションリサーチ(Action Research)のイメージは以下の通りです。
図. 学校実習と研究の融合・アクションリサーチの構造
学校課題解決研究A・B
学校課題解決研究Ⅰ・Ⅱを基礎として位置づけ、その発展的な選択科目として履修する「学術論文(修士論文相当)」の科目です。(その研究法を教授する『高度教育研究方法論』を必修とする。)
これは、修士論文と同様の論文審査(主査1名、副査2名)を行い、教育実践を対象とした研究(教科内容に関する専門研究は除く)となっています。